回想
幼かったあの日
私の家には
ルールがあった
約束を破ったら
歩いて15分ほどの距離にある
お地蔵様の所へ行って
また帰ってくるというものだった
田舎道にある
そのお地蔵様までは
街灯もなく
田んぼ道の細い道で
車がやっと一台通れるほどの
川へと続く
一本道だ
約束は何てことないようなことで
犬の散歩を三回さぼったら・・・
というものだった
飼いたいと言ったのに
行くと言ったのに
散歩を行かなくなる
子供特有の 約束破りだった
ただ
私には
怖かった
暗闇が怖かったのではなく
生き道は怖くないのに
帰り道が 怖い事が
怖くて仕方なかった
同じ道が
背を向けた途端に
異様な 焦りと 孤独で
振り向くことが出来ないほど
怖かった
そんな
私を
あざ笑うように
稲が風に揺れて
ヒューヒューと鳴く
そのことが
一層 怖かった
幼い時に
怖かった事
今でも
変わらず
怖い事
人は
目的を無くしたら
足を踏み出すことが出来ないほど
生きるのが
怖くなる
だから・・・
過去に戻ってはいけません
今に背を向けてはいけません
どんなに怖くても
足がすくんでも
未来へ
歩き続ける事です
そうして
思うように
出来なくても
また
歩き続ける事です